「破産宣告」という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。しかし、「破産宣告とは何か」「手続きはどのくらい時間がかかるのか」「その後の生活はどうなるのか」といった疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。
実は、「破産宣告」は現在の法律では使われていない古い用語です。正確には「破産手続開始決定」と呼びます。ただし、破産手続が開始されても、その時点では借金は帳消しにはなりません。
この記事では、破産宣告とは何か、その意味、条件、手続きの流れ、そしてメリット・デメリットを、わかりやすく解説します。
制度の根拠となる法令については、破産法でも確認できます。
破産宣告とは何か
「破産宣告」は現在の法律用語ではない
「破産宣告」とは、2004年の民事再生法改正以前の用語です。現在の正式な用語は「破産手続開始決定」(はさんてつづきかいしけつてい)です。
ただし、一般的な会話では「破産宣告」という言葉が今でも使われています。法律の専門家と話す場合は「破産手続開始決定」という正式な言葉を使う方が無難です。
破産手続開始決定と自己破産の関係
破産手続開始決定:
裁判所が「この人は破産状態にあり、破産手続を開始します」と決定すること。つまり、破産手続がスタートしたというシグナル。
自己破産:
より広い概念。破産手続開始決定から、最終的に免責許可決定が出るまで、すべての手続きを総称して「自己破産」と呼ぶ。
つまり、「破産手続開始決定が出た = 自己破産を申し立てた」ということになります。
破産宣告とは言っても、借金は消えるのか(免責との違い)
重要な注意:破産手続開始決定が出た時点では、借金は帳消しになりません。
破産手続開始決定:
破産手続がスタートすることを宣言。この段階では、借金の返済義務は残っている。
免責許可決定:
破産手続を経て、裁判所が「この人の借金を帳消しにします」と決定すること。この段階で初めて、借金の返済義務が消える。
つまり、破産手続開始決定と免責許可決定は、別の決定なのです。
手続きの全体像を公式情報で確認したい場合は、裁判所の自己破産手続の案内も参考になります。
破産宣告とは言う際に必要な条件
支払不能とは何か(判断の考え方)
破産手続開始決定が出るための最重要条件は「支払不能」です。
支払不能とは:
「継続的に、安定的に借金を返済することができない状態」のこと。
収入・負債・返済継続の見通し
裁判所が「支払不能」と判断するポイント:
- 月々の収入 < 月々の生活費 + 借金返済額:返済能力が著しく低い
- 現在の資産で、借金を一括返済できない:短期的な解決が不可能
- 将来の返済見通しが立たない:給与が減少傾向、または仕事が不安定
破産障害事由とは(手続が進まないケース)
特定の状況では、破産手続開始決定が出ない場合があります。これを「破産障害事由」と言います。
予納金など費用面のハードル
予納金が払えない場合:
破産手続を進めるには、予納金(裁判所への支払い)が必要。ただし、以下の対応により、手続きを進める可能性があります。
- 分割納付の相談
- 法テラスの費用立て替え制度
- 弁護士費用の分割払い
申立てできる人(本人・債権者)
本人申立て:
本人が裁判所に「自己破産の申し立て」をする。通常はこのパターン。
債権者申立て:
貸金業者などの債権者が、本人に代わって破産申立てをすること。
債権者申立てが起こる典型例
- 複数の滞納があり、債権者が裁判で判決を取った後、本人から返済がない
- 本人が債権者からの連絡を無視し続けている
- 本人が海外逃亡している
破産宣告とはの流れまでの手続き
相談先の選び方(弁護士・司法書士の違い)
自己破産を検討したら、まず弁護士または司法書士に相談します。
相談窓口の情報として、弁護士会の自己破産相談も確認しておくと選びやすくなります。
代理権の有無と対応範囲
弁護士:
- 全ての債務整理手続きに対応
- 裁判所への代理人として機能
- 代金は高い傾向
司法書士:
- 自己破産・個人再生に対応可能
- ただし、訴訟代理はできない(140万円以上の案件も対応不可の場合がある)
- 代金は比較的安い
申立て準備で必要になる書類・資料
債権者一覧・財産目録・陳述書のポイント
破産申立書:
「自己破産の申し立てをします」という公式の書類。
陳述書:
「なぜ借金ができたのか」「どのような事情で返済できなくなったのか」を詳しく述べた書類。誠実さが重要。
債権者一覧表:
すべての借入先、借入額、返済状況を正確に記載。漏れがあると問題になる。
財産目録:
現在保有している全ての財産(預貯金、生命保険、不動産、車など)を記載。
家計収支・通帳・給与明細などの証拠資料
- 給与明細(直近3ヶ月分)
- 通帳コピー(直近6ヶ月分)
- 家計簿(月々の支出を示す)
- 税務申告書(自営業の場合)
- 戸籍謄本・住民票
裁判所への申立てから開始決定まで
審尋・追加資料の指示が出る場合
申立て後、裁判所は書類をチェックします。期間は通常1~3ヶ月。
この間に起こりやすいこと:
- 書類の不備指摘:「この点について、より詳しく説明してください」という要求
- 追加資料の要求:「通帳のコピーを追加で提出してください」など
- 審尋(しんじん):裁判官が本人から事情を聞く機会。通常は1回で済む
破産宣告とはの後にどうなるか(同時廃止と管財事件)
同時廃止の特徴と向いているケース
同時廃止とは:
破産手続開始決定と同時に、破産手続を終了させる方法。財産がほぼない人が対象。
対象者の典型:
- 借金は多いが、預貯金がない
- 給与は全て生活費に充てている
- 持ち家がない
- 高級品を持っていない
免責審査へ進む流れ
同時廃止の場合、破産手続開始決定後、直接免責許可決定へ進みます。期間は1~2ヶ月。
管財事件の特徴と破産管財人の役割
管財事件とは:
破産手続開始決定後、破産管財人が選任され、財産を調査・処分する方法。財産がある人が対象。
調査・換価・配当の基本
破産管財人の役割:
- 調査:本当に隠れた財産がないか確認
- 換価:見つかった財産を売却する
- 配当:売却代金を債権者に按分して分配
債権者集会で行われること
管財事件の場合、債権者集会が開催されます(複数回)。
債権者集会で行われること:
- 破産管財人からの報告
- 財産処分の状況説明
- 債権者からの質問・異議
宣告後に制限される可能性のある行動
郵便物の扱い
管財事件の場合、本人宛の郵便物が管財人に転送される場合があります。
理由:隠れた資産がないか確認するため。
引越し・旅行の制限(許可が必要な場合)
管財事件の場合、以下が制限される可能性:
- 引越し:管財人の許可が必要な場合がある
- 旅行:長期の旅行には許可が必要な場合がある
ただし、日常生活に必要な活動は制限されません。
破産宣告とはが持つメリット
督促・取り立てが止まる仕組み
破産手続開始決定が出ると、法的に督促が停止されます。
具体的には:
- 貸金業者からの電話や郵送物が止まる
- 訴訟や差し押さえが中止される
- 給与差し押さえが停止される
受任通知と裁判手続の違い
ただし、督促が完全に止まるのは「破産手続開始決定が出た後」です。弁護士に依頼しただけ(受任通知が送付された後)でも、一定期間は督促が続く場合があります。
免責許可で返済義務が免除される
破産手続を経て、最終的に免責許可決定が出ると、借金がゼロになります。
これが、自己破産の最大のメリットです。
免責までの期間の目安
同時廃止の場合:3~6ヶ月程度
管財事件の場合:6ヶ月~1年以上
生活再建に向けてできること
免責許可決定が出た後:
- クレジットカードを新規申請する(ただし審査は厳しい)
- 勤務先を変わることも可能(資格制限の対象外の職)
- 新しい生活をスタートさせることが可能
破産宣告とはが持つデメリット
信用情報への影響(いわゆるブラック)
自己破産は、信用情報に「事故情報」として記録されます。いわゆる「ブラック状態」です。
クレジットカード・ローンへの影響期間の目安
事故情報の保有期間:
- CIC:5年
- JICC:5年
- KSC:7~10年
この間、クレジットカードやローンの新規申し込みは、ほぼ全て落ちます。
保証人への影響(請求が移る)
重要:本人が自己破産しても、保証人の返済義務は消えません。
その後:
- 貸金業者は保証人に対して、残りの返済を請求
- 保証人も返済困難な場合、保証人も自己破産を検討することになる
家族に知られやすいポイント
自己破産が家族にバレやすい理由:
- 保証人になっている家族に請求が届く
- 持ち家がある場合、不動産が処分される
- 官報に掲載される
官報掲載の実態と注意点
官報とは:
政府が発行する公式の発行物。破産手続開始決定と免責許可決定が掲載されます。
ただし、注意:
官報を毎日読む一般人はほぼいません。会社の同僚や友人に知られる可能性は極めて低いです。
財産が処分される範囲
持ち家・車・預貯金・保険の典型例
処分対象になりやすい財産:
- 持ち家:通常は売却対象。ただし、一部自治体では家を守る制度がある場合も
- 自動車:ローン返済中でない限り、売却対象
- 預貯金:99万円を超える分は没収
- 生命保険:解約返戻金がある場合、その一定額
処分対象にならない財産:
- 日常生活に必要な衣服、寝具
- 食器などの食卓用具
- 99万円以下の現金
- 年金(受給権)
資格・職業制限がかかることがある
制限される期間と復権
資格制限の対象になりやすい職業:
- 弁護士、司法書士、公認会計士
- 警備員
- 生命保険募集人
- 宅地建物取引士
制限期間:
破産手続開始決定から免責許可決定まで。免責が確定すると、資格制限は自動的に解除される。
差押えや訴訟への影響(状況別の整理)
既に進行中の訴訟:
破産手続開始決定により、手続きが中止される。
給与差し押さえ:
既に始まっている給与差し押さえも、開始決定と同時に停止される。
破産宣告とはで失敗しないための注意点
免責不許可事由を理解する
破産手続開始決定が出ても、免責許可決定が出ない可能性があります。
これを「免責不許可事由」と言い、以下が該当します。
偏頗弁済(特定の人だけ返す)
自己破産申立て前に、特定の債権者(親族など)だけ返済すること。
問題:他の債権者との公平性を損なうため、免責が許可されない可能性。
浪費・ギャンブル・投機
借金の原因がギャンブルや浪費である場合、免責不許可事由に該当する可能性。
ただし、注意:「裁量免責」により、反省の意思が明確な場合は免責される可能性もあります。
財産隠し・虚偽申告
例:
- 財産を隠して、財産目録に記載しない
- 借金を故意に隠す
- 虚偽の陳述書を作成する
過去の免責歴(期間要件)
前回の自己破産から7年以内の重申立ての場合、免責が許可されない可能性があります。
申立て前にやってはいけない行動
解約・名義変更・現金化のリスク
申立て前にやってはいけないこと:
- 生命保険の解約:隠す目的だと見なされる
- 預金の現金化:財産隠しと判断される可能性
- 親族への贈与:資産を隠す目的で見なされる
- 特定の債権者だけ返す:偏頗弁済として問題に
破産以外の選択肢も比較する
任意整理・個人再生が向くケース
任意整理が向く人:
月々わずかでも返済能力がある人。利息をカットすれば、返済が続けられる場合。
個人再生が向く人:
安定した収入がある人。借金を大幅に減額して、3~5年で返済できる場合。特に住宅ローンがある人は、個人再生で家を守れる。
費用の目安と支払い方法
弁護士費用の内訳(着手金・報酬・実費)
着手金:20~50万円程度
報酬金:免責許可決定後、費用の清算
実費:通信費、書類作成費など、実際にかかった費用
分割払いの考え方
多くの弁護士事務所は、分割払いに対応しています。
典型的な分割例:
毎月3~5万円、6~12ヶ月かけて支払う。
裁判所費用(同時廃止と管財の違い)
予納金が必要になるケース
同時廃止の場合:3,000~10,000円程度(郵便切手など)
管財事件の場合:20~50万円程度(破産管財人の報酬)
法テラス等の支援制度の使い方
法テラスとは:
経済的に困難な人向けの、弁護士費用立て替え制度。
具体的な手続きや疑問点は、法テラスの自己破産に関するFAQも参考になります。
利用条件:
- 一定以下の収入・資産
- 免責許可決定後、費用を分割返納
よくある質問(Q&A)
生活保護でも破産宣告はできる?
回答:はい、可能です。生活保護受給者でも自己破産の申し立てはできます。生活保護費は処分対象にはなりません。
持ち家は必ず手放す?
回答:基本的には、持ち家は売却対象になります。ただし、個人再生の「住宅ローン特則」を使えば、住宅ローンを維持しながら、他の借金を減額することが可能です。
選挙権・戸籍・住民票への影響は?
回答:選挙権、戸籍、住民票に直接的な影響はありません。自己破産しても、選挙投票は可能です。
会社にバレる可能性はある?
回答:基本的には会社にバレません。ただし、保証人になっている場合、会社の担当者に知られる可能性があります。また、資格制限の対象職に就いている場合、職業が制限される可能性があります。
手続き期間はどれくらいかかる?
回答:
- 相談から破産申立てまで:1~3ヶ月
- 申立てから破産手続開始決定まで:1~3ヶ月
- 同時廃止の場合、開始決定から免責許可まで:1~2ヶ月
- 管財事件の場合、開始決定から免責許可まで:6ヶ月~1年
まとめ
破産宣告とはの要点(用語・条件・流れ)
破産宣告とはについて、重要なポイントをまとめます。
用語:
「破産宣告」は古い用語。正式には「破産手続開始決定」と「免責許可決定」の2つの決定がある。
条件:
「支払不能」の状態であること。月々の返済ができない状況が、主な判断基準。
流れ:
相談 → 申立て → 破産手続開始決定 → 同時廃止または管財事件 → 免責許可決定 → 借金ゼロ
メリットとデメリットの整理
メリット:
- 督促が止まり、精神的な負担が大きく軽減される
- 最終的に借金がゼロになる
- 生活を再建するチャンスが得られる
デメリット:
- 信用情報に記録され、5~10年ローンが組めない
- 資産(住宅、自動車など)が処分される可能性
- 保証人に請求が及ぶ
- 一部の職業に制限がかかる
早めに専門家へ相談すべき理由
破産手続開始決定を検討している場合、早めに弁護士または司法書士に相談することが重要です。
理由:
- 自己破産が本当に最適な選択か、任意整理や個人再生の方が良いのか、判断できる
- 申立て前の準備を正確にすることで、手続きをスムーズに進められる
- 免責不許可事由に引っかかることを事前に防げる
- 精神的な負担が大幅に軽減される
今、借金で苦しんでいるなら、一人で悩まず、すぐに法テラスまたは弁護士事務所に相談してください。

