「弁護士に債務整理を依頼したら『受任通知』が送られると聞いたが、何なのか不安」「本当に取り立てが止まるのか」という疑問を持つ方も多いでしょう。受任通知とは、債務整理手続きの中で最も重要な「第一歩」であり、同時に「諸刃の剣」でもあります。
本記事では、受任通知の意味、取り立てが止まる仕組み、そしてメリット・デメリット、さらに注意すべき点まで、わかりやすく解説します。これを読めば、受任通知について正確に理解でき、冷静に判断できるようになります。
受任通知とは何かをわかりやすく解説
最初に、受任通知の基本を正確に理解することが重要です。
受任通知の意味(介入通知との違いも含む)
受任通知とは、「弁護士または司法書士が依頼者の代理人になったことを、債権者(借金の貸し手)に通知する書面」です。
別の言い方:
- 「これからは、この依頼者の問題はすべて代理人である私に連絡してください。依頼者には直接連絡しないでください」という通知
- 「介入通知」と同じ意味で使われることもある
- 弁護士会や司法書士会の標準様式が存在する
受任通知(介入通知)の具体的な記載例やサンプルのイメージを確認したい方は、受任通知のサンプルと記載内容のポイントもあわせて読むと理解が深まります。
どんな場面で送られるのか(債務整理との関係)
受任通知は、債務整理に限定されません。以下のケースでも送られます:
- 債務整理(任意整理・個人再生・自己破産):最も一般的
- 貸金業者からの不法な取り立てへの対抗:例えば、違法な取り立てを止めるため
- その他の法的トラブル:損害賠償請求、離婚など
任意整理・個人再生・自己破産での位置づけの違い
- 任意整理:
- 受任通知は「交渉を始めるシグナル」
- 同時に、「取り立てを止める」という効果も発生
- これにより、「取り立てを止めつつ、交渉する」という二段階が可能になる
- 個人再生:
- 受任通知は「裁判所手続き開始の準備段階」
- その後、再生計画案を作成し、裁判所に申立て
- 自己破産:
- 受任通知は「破産申立ての前段階」
- その後、破産申立て、免責許可決定へと進む
受任通知の効力|取り立てが止まる理由
受任通知の最大の効果は「取り立てが止まる」という点です。その仕組みを理解することが重要です。
督促が止まる仕組み(連絡窓口が代理人へ移る)
受任通知が届いた瞬間、法的に以下のことが起こります:
- 連絡窓口が「依頼者」から「代理人(弁護士)」に変わる
- 債権者は「依頼者に直接連絡してはいけない」という法的義務が生じる
- なぜなら、「代理人がいるのに本人に直接連絡する」ことは、弁護士法や貸金業法で禁止されているから
- 違反すると、債権者側が処罰される可能性がある:貸金業者の場合、営業停止など
つまり、受任通知は「法律で守られた」取り立て停止なのです。
受任通知の位置づけや効果をさらに体系的に整理したい場合は、受任通知の役割とメリット・デメリットの整理も参考になります。
止まる連絡・止まらない連絡の整理
【止まる連絡】
- 返済の催促電話
- 支払いを求めるハガキ・手紙
- 「支払いがないなら訴訟を起こす」という脅迫的な連絡
- クレジットカード会社からの督促
- 消費者金融からの取り立て
税金・社会保険料など「止まらない督促」の具体例
- 税務署からの税金督促:国税、地方税
- 社会保険料の徴収:厚生労働省など
- 養育費の強制執行:家庭裁判所からの通知
- 罰金・科料:刑事事件絡み
- これらは「民間の債権」ではなく「公的な債権」であり、受任通知の効力が及ばない
いつから止まる?届くまでの目安とタイムライン
- 弁護士が受任通知を発送:通常、依頼から1~2営業日
- 郵送で届くまで:平均3~5営業日
- 債権者が受取確認:到達後、通常1~3営業日で処理
- 実際に電話などが止まる:受取確認~1週間程度(業者によってばらつき)
- 合計:依頼から約2週間程度で、完全に督促が止まることが多い
ただし、通知到達前に来た電話はまだ止まっていません。受任通知発送前の督促は覚悟が必要です。
受任通知を送ってもらうメリット
受任通知のメリットは、単に「取り立てが止まる」だけではありません。
督促ストレスから解放される
- 毎日の電話、ハガキ、SMSからの解放
- 心理的な安定が戻る:「いつ督促が来るか」というストレスがなくなる
- 睡眠が改善される:多くの人が「受任通知到達後、初めてぐっすり眠れた」と報告
- 仕事のパフォーマンスが回復する:ストレスが減ると、仕事への集中力も戻る
生活再建と返済方針を考える時間ができる
- 督促に追われていては、冷静な判断ができない
- 受任通知で督促が止まると、初めて「どうすべきか」を考える余裕が出る
- 例:「任意整理で返済するのか、個人再生か、自己破産か」という判断を、冷静にできるようになる
債務整理費用を準備しやすくなる
家計の見直しで優先すべき固定費・支出項目
- 受任通知で返済が止まると、その分の資金が浮く
- 例:月5万円の返済をしていた人なら、月5万円が手元に残る
- その5万円を「弁護士費用の分割払い」に充てられる
- 家計の見直しで削減できる項目:
- サブスクリプション(動画配信など):月1,000~2,000円
- 食費:外食を減らす、自炊に切り替え
- 通信費:格安スマホに変更
受任通知のデメリットと注意点
受任通知はメリットがある一方、重大なデメリットもあります。
信用情報への影響(いわゆるブラックリスト)
影響する行動(ローン・クレカ・携帯分割など)
- 弁護士が受任通知を送った時点で、信用情報機関に「債務整理」として登録される
- 登録期間:約5~7年間
- この間、以下が困難になる:
- 新しいクレジットカード申請(ほぼ100%落ちる)
- ローン申請(住宅ローン、自動車ローン)
- 携帯電話の機種代分割購入
- 賃貸住宅の審査(保証会社経由での信用情報確認)
- ただし、現在持っているクレジットカードが即座に使えなくなるわけではない場合が多い:ただし、更新時には失効する
銀行口座が凍結するケースと回避策
重要な注意点:「受任通知を送った銀行が、その人の口座を凍結する」ことがあります。
引落口座・給与受取口座の変更チェックリスト
【銀行口座凍結を避けるための対策】
- ☐ 弁護士に依頼する「前に」、借金のない別の銀行口座を開設する
- ☐ 給与受取口座を、借金のない別の銀行に変更する
- ☐ 公共料金(光熱費、通信費)の自動引き落としを、新しい口座に変更する
- ☐ 銀行カードローンの借入がある場合、その銀行は避ける(同じ銀行系の債権と口座が相殺されるリスク)
なぜ凍結されるのか:
- 銀行が「この人は債務整理をした。銀行ローンの返済が危ない」と判定
- 「銀行ローンの債権」と「口座の預金」を相殺する権利を行使
- 例:銀行カードローンで50万円の借金、口座に30万円ある場合 → 預金が没収されて、借金が20万円に減額される
特に「銀行口座凍結」の流れや注意点をより詳しく知りたい場合は、受任通知到達後に起こりやすい変化と注意点も確認しておくと安心です。
保証人がいる場合のリスク(保証人への請求)
- 「自分は受任通知で督促が止まった」が、「保証人には请求が来る」
- なぜ?:保証人は「自分たちとは別の債務者」という扱いだから
- 保証人への影響:
- 毎月の返済を求められる(本人の分まで)
- 保証人もクレジットカードやローンが申請不可に
- 保証人が支払えないと、保証人も債務整理を検討する必要が出る
- 重要:受任通知を送る前に、保証人に必ず相談することが重要
担保付き債務の注意点(担保権実行の可能性)
住宅ローン・車ローンの典型パターン
- 住宅ローンがある場合:
- 受任通知で督促は止まるが、住宅ローンの弁済期限は変わらない
- 個人再生を選べば「住宅資金特別条項」で自宅を残せる可能性あり
- 任意整理を選べば、住宅ローンは含めず、他の借金だけ整理できる
- ただし、住宅ローンの返済が遅れていれば、競売のリスク
- 自動車ローンがある場合:
- 受任通知で督促は止まるが、ローン会社は車を回収する権利がある
- 個人再生で「自動車ローンを除いて整理」することで、車を残すことが可能な場合も
- 任意整理なら、自動車ローン以外の借金だけ整理できる
受任通知の主な記載内容|何が書かれている?
受任通知はどのような内容で構成されているのかを理解することで、その効力がより明確になります。
基本情報(宛先・依頼者情報・代理人情報)
- 宛先:債権者(貸金業者、クレジットカード会社など)の名前と住所
- 依頼者情報:本人の名前、住所、生年月日
- 代理人情報:弁護士または司法書士の名前、事務所、連絡先
- 例文:「△△様の債務に関して、本人の委任を受けて、代理人として対応させていただきます」
債権者への依頼事項(連絡停止・取引履歴開示など)
- 「本人への直接連絡を一切やめること」
- 「これからの連絡は、当事務所にお願いします」
- 「取引履歴を開示してください」という請求
- 「利息制限法を超える利息を払い過ぎていないか、確認のために取引履歴の提出をお願いします」
引き直し計算・過払い金の記載がある場合
- 受任通知の中に「引き直し計算を行う予定」という記載がある場合がある
- 意味:過払い金がないか確認するため、利息制限法での再計算をする
- この記載があると「任意整理」や「過払い金請求」が視野に入っている可能性
今後の方針の書き方(任意整理/破産予定など)
- 「本人の経済状況を確認した上で、最適な債務整理方法を検討します」
- 「現在、任意整理を予定しています」という場合もある
- 「個人再生または自己破産を検討する可能性があります」という場合も
- 明確な方針が決まっていなければ「検討中」という曖昧な表現になることも
受任通知が届くまでの流れ
受任通知が届く実際の流れを理解することで、準備がスムーズになります。
相談から受任までにやること
準備しておく資料(借入先・残高・契約書類など)
- 借入先の一覧:どの貸金業者から幾ら借りているか
- 残高確認書:最新の残額
- 毎月の返済額
- 契約書類(あれば)
- 給与明細:直近3ヶ月分(生活再建のため)
- 預貯金の残高確認書
- 住宅ローン・自動車ローンの書類(あれば)
発送方法と到達までの一般的な流れ
- 弁護士が受任通知を作成:通常、依頼から1~2営業日
- 内容証明郵便で発送:証拠を残すため、通常は内容証明郵便を使用
- 到達までの期間:3~7営業日(地域による)
- 債権者が受け取り、処理:到達後、1~3営業日で督促部門に指示が下りることが多い
- 実際に電話などが止まる:依頼から2~3週間が目安
到達後に起こる変化(連絡先・支払いの扱い)
- 債権者からの電話がなくなる:通常は翌営業日~3日以内
- 「弁護士まで連絡してください」という返答が来る(自動応答など)
- 弁護士への連絡開始:取引履歴の開示請求など
- 本人による返済は原則「一時停止」:弁護士の指示まで待つ
受任通知を送っても督促が止まらないケースと対処法
稀に、受任通知を送っても督促が続くことがあります。その場合の対処法を説明します。
通知が未着・住所違いなどの事務的トラブル
- 「受任通知は送られたが、債権者に到達していない」というケース
- 原因:住所の誤記、転居後の住所更新されていない、など
- 対処法:弁護士に「通知が到達したか確認して」と指示し、必要に応じて再送付
債権者側の処理遅延で止まらない場合
- 「通知は到達したが、督促部門への指示がまだ」というケース
- 大手の貸金業者でも「処理に1週間要した」という例もある
- 対処法:「受任通知到達後も督促電話が来ている」と弁護士に報告し、督促停止を強く指示してもらう
銀行・個人間・闇金など「効力が及びにくい」ケース
- 銀行系:受任通知の効力は及ぶが、「返済義務」は残る
- 個人間の借金:受任通知の効力が及びにくい(法的強制力に欠ける)
- 闇金:完全に無視する傾向(受任通知など意に介さない)
すぐに取るべき行動(弁護士への連絡・証拠保全)
- 督促電話が来たら、すぐに弁護士に報告
- 通話内容を記録する:スマートフォンの録音アプリなど
- ハガキやSMS は保管する:証拠として使える
- 「受任通知後も督促が来た」という証拠を集める
- 闇金の場合は、警察への届出も検討
弁護士・司法書士に相談するメリットと選び方
受任通知を送ってもらうなら、適切な専門家の選択が重要です。
司法書士視点での効力や注意点も合わせて比較したい方は、受任通知の効力と注意点の解説も役立ちます。
手続き選択の適正化(任意整理/再生/破産)
- 自分1人では「どの手続きが最適か」判断できないことが多い
- 弁護士に相談すると:
- 家計、借入、資産状況を総合判定
- 「任意整理で返済可能か」を見極める
- 「個人再生で自宅を残すべきか」を判定
- 「自己破産が必要か」を判定
交渉・書面対応を任せられる安心感
- 弁護士がいれば、債権者との交渉を任せられる
- 「分割払いで応じてもらえるか」「利息カット可能か」など、複雑な交渉も対応
- 本人が「交渉下手」でも、プロが対応するので安心
費用の考え方と分割相談のポイント
相談前に確認したい質問リスト
- ☐ 初回相談は無料か
- ☐ 着手金がいくらか、分割払い可能か
- ☐ 「受任通知送付後、分割払い中でも申立てを進められるか」を確認
- ☐ 追加費用が発生する可能性があるか
- ☐ 定期的な進捗報告があるか
- ☐ 弁護士と司法書士のどちらか、その理由は何か
受任通知に関するよくある質問
受任通知は撤回できる?費用は返ってくる?
Q: 受任通知を送った後に「やっぱり依頼を取りやめたい」と言った場合どうなりますか
A: 可能ですが、複雑です。
- 受任通知は撤回できる:弁護士に「取りやめたい」と伝えれば対応
- 弁護士費用は返ってこない傾向:「着手金」は返金されないことが多い(契約内容による)
- ただし、受任通知を撤回すると、督促が再開される:これが最大のデメリット
- 「取りやめたい」という判断をする前に、弁護士に相談することが重要
任意整理は送る相手を選べる?選べない手続きは?
Q: 「Aという貸金業者には受任通知を送らず、Bという貸金業者だけに送る」ことはできますか
A: 手続きによって異なります。
- 任意整理:相手を選べる。例えば「銀行ローンは除いて、消費者金融だけ」という選択が可能
- 個人再生:すべての債権者に受任通知を送る必要がある
- 自己破産:すべての債権者に受任通知を送る必要がある
借金以外でも受任通知は使う?(離婚・相続など)
Q: 離婚や相続トラブルでも「受任通知」は使われますか
A: はい。同じ仕組みが使われます。
- 離婚:慰謝料や養育費の交渉で、弁護士が「介入通知」(受任通知と同じ)を送る
- 相続:遺産分割協議で弁護士が介入通知を送る
- その場合、相手は「弁護士経由で連絡してください」という状況になる
まとめ:受任通知で取り立てを止め、生活再建の第一歩へ
受任通知は「最後の砦」ではなく「最初の一歩」です。これを理解することが、冷静な判断につながります。
メリット・デメリットを踏まえた判断ポイント
【受任通知を送るべきか判断するチェック】
- ☐ 毎日の督促で精神的に追い詰められている → YES(送るべき)
- ☐ 返済が可能で、単に返済の遅延をしているだけ → NO(交渉の方が得策かもしれない)
- ☐ 複数の借金があり、整理が必要 → YES(送るべき)
- ☐ 保証人がいるが、保証人に迷惑をかけたくない → NO(保証人との相談が必須)
- ☐ 住宅ローンを残したい → YES(個人再生で対応可能)
- ☐ 車が商売道具(営業用)で、失いたくない → YES(個人再生で対応可能)
早めの相談が有利になりやすい理由
- 「督促が来てから3ヶ月」と「督促が来ってから1年」では、状況が全く異なる
- 理由:長期化するほど、信用情報へのダメージが大きくなる
- また、長期化するほど「任意整理で対応」という選択肢が失われ、「自己破産しかない」という状況に追い詰められることもある
- 早期相談であれば「任意整理で解決」「個人再生で自宅を残す」という選択肢が広がる
- 結論:「損を最小化する」という観点から、早期相談が重要

