「自己破産」という言葉を聞くと、「人生終わり」「全てを失う」というイメージを持つ人も多いでしょう。しかし、実際の自己破産とは わかりやすく言うと、借金で苦しむ人が人生をリセットするための、法律で認められた制度です。
この記事では、自己破産とは何か、仕組み、本当のメリット・デメリット、手続きの流れ、そして費用を、わかりやすく解説します。正しく理解することで、不安は大きく軽減されるでしょう。
自己破産とは?わかりやすく言うと何をする制度か
自己破産と「免責」の関係(借金がゼロになる仕組み)
自己破産とは わかりやすく説明すると、裁判所に申し立てて、借金の返済義務を免除してもらう制度です。
流れ:
- 本人が裁判所に「破産申立て」をする
- 裁判所が「破産手続開始決定」を出す
- 最終的に「免責許可決定」が出る
- 借金がゼロになる
制度の公式な案内として、裁判所の自己破産手続案内もあわせて確認すると理解が深まります。
「免責」とは:
「この人の借金を帳消しにします」という、裁判所の決定。これが出て初めて、借金がゼロになります。
他の債務整理(任意整理・個人再生)との違い
自己破産:
借金をゼロにする。最も強力だが、失う財産もある。
任意整理:
弁護士が貸金業者と交渉し、利息をカット。月々の返済は続く。財産は失わない。
個人再生:
借金を30~50%に減額。3~5年で返済。住宅ローン特則で家を守ることも可能。
どれを選ぶかは、個人の状況による。自己破産だけが選択肢ではありません。
自己破産が「最終手段」と言われる理由
自己破産が「最終手段」と言われるのは、以下の理由:
- 借金はゼロになるが、財産も失う可能性がある
- 信用情報に記録され、約5~10年ローンが組めない
- 手続きに時間と費用がかかる
つまり、「本当に返済不可能な時の、最後の手段」という位置づけなのです。
自己破産ができる条件(支払不能)をかみ砕いて解説
「支払不能」の判断ポイント(収入・支出・返済状況)
自己破産が認められるための条件は「支払不能」です。
判断ポイント:
- 月々の収入 < 月々の生活費 + 借金返済額
- 現在の財産で、借金を一括返済できない
- 将来、返済見通しが立たない
つまり、「継続的に、借金を返済することが不可能な状態」を指します。
よくある誤解(少額でもできる?働いていてもできる?)
誤解1:「少額の借金だからできない」
これは誤りです。借金額が少なくても、返済能力がなければ自己破産できます。
誤解2:「働いていたらできない」
これも誤りです。給料がいくら少なくても、働いている人でも自己破産できます。ただし、「継続的に返済できない状態」であることが条件。
誤解3:「持ち家がある人はできない」
理論的には自己破産できますが、持ち家は処分対象になる可能性が高い。ただし、個人再生の「住宅ローン特則」を使えば家を守ることも可能。
申立て前にやってはいけない行動の概要
申立て前に以下をすると、免責が許可されない可能性があります。
- 特定の債権者だけを先に返済する(偏頗弁済)
- 財産を隠す、または名義変更する
- 詐欺的な借入をする
- 新たな借金をする
免責される借金・免責されない借金(非免責債権)
免責されやすい債務の具体例(ローン・カード・奨学金など)
免責の対象になる借金:
- クレジットカードの借金
- 消費者金融からの借入
- 銀行ローン
- 奨学金(ただし条件付き)
- 自動車ローン(ただしローン中の車は回収される可能性)
免責されない債務の具体例(税金・養育費・罰金など)
以下の債務は、自己破産しても免責されません。返済義務が残ります。
- 所得税・住民税:自治体への義務
- 社会保険料:国民年金、健康保険料など
- 養育費:子どもの生活保障
- 罰金・科料:犯罪に対する制裁
- 慰謝料:損害賠償(一部例外あり)
ケース別の注意点(保証人付き借入、公共料金の扱い)
保証人付き借入:
本人は免責されますが、保証人の返済義務は残ります。保証人に請求が移ります。
公共料金の滞納:
水道料金、電気代などの滞納分は免責対象になることが多い。ただし、供給停止のリスクはある。
自己破産のメリット(生活再建にどう効くか)
借金の支払い義務がなくなるメリット
自己破産の最大のメリットは、借金がゼロになることです。
例えば:
- 300万円の借金 → 免責後はゼロ
- 月々10万円の返済 → 返済義務がなくなる
- 利息の支払い → なくなる
この一点だけで、人生が大きく変わります。
督促・取り立て・差し押さえが止まる流れ
破産申立て直後:
弁護士が「受任通知」を貸金業者に送付。法的に督促が停止。
破産手続開始決定後:
給与差し押さえ、銀行口座差し押さえなど、全ての強制執行が停止。
メリット:
毎日の督促電話がなくなる。精神的な負担が大幅に軽減される。
生活に必要な財産が残る範囲(自由財産の考え方)
自由財産とは:
自己破産しても、本人が保有し続けられる財産。
具体例:
- 99万円までの現金
- 生活に必要な衣服、寝具
- 食卓用具
- 給与(の一定額)
- 年金(受給権)
つまり、「生活できなくなるほど全てを失う」わけではありません。
自己破産のデメリット(現実に起こる影響を整理)
処分対象になりやすい財産(不動産・車・保険など)
自己破産のデメリットとして、一定の財産が処分対象になります。
- 持ち家:通常は売却対象
- 自動車:ローン完済済みなら売却対象
- 生命保険:解約返戻金がある場合、一定額
- 99万円を超える現金
- 預貯金:一定額以上
信用情報への影響(いわゆるブラックの期間と注意点)
信用情報に「事故情報」が登録される期間:
- CIC(信用情報機関):5年
- JICC:5年
- KSC:7~10年
影響:
この間、クレジットカード申し込み、ローン申し込みは、ほぼ全て落ちます。
官報掲載はどこまで影響するか
官報とは:
政府が発行する公式な機関紙。自己破産の情報が掲載されます。
実際の影響:
官報を毎日読む一般人はほぼいません。会社の同僚や友人に知られる可能性は極めて低い。
ただし知られやすい場合:
保証人がいる場合、またはすでに給与差し押さえが進行中の場合。
一部職業の制限と「復権」
制限される職業:
- 弁護士、司法書士
- 警備員
- 生命保険募集人
- 宅地建物取引士
制限される期間:
破産手続開始決定から免責許可決定まで。免責が確定すると「復権」により制限は解除。
保証人・家族への影響(連絡、同居の場合の注意)
保証人への影響:
本人の免責後、貸金業者は保証人に請求。保証人も返済義務を負う。
家族への影響:
基本的に家族の信用情報には影響なし。ただし、持ち家売却時に同意が必要な場合がある。
自己破産が認められない・不利になりやすいケース
免責不許可事由の代表例(浪費・ギャンブル・財産隠し等)
以下の場合、免責が許可されない可能性があります。
- 浪費:自分の生活水準を超えた支出
- ギャンブル:パチンコ、競馬、FXなど
- 財産隠し:資産を秘密にする
- 詐欺的借入:返すつもりのない状態での借入
- 偏頗弁済:特定の債権者だけ先に返す
「裁量免責」が期待できるケースの考え方
裁量免責とは:
免責不許可事由があっても、本人の反省が明確で、事情が酌量される場合、裁判所が免責を許可すること。
期待できるケース:
- ギャンブルが原因だが、本人が治療を始めた
- 浪費があったが、その背景に精神的な問題があった
- 明確な反省と再発防止策がある
申立て前後でのNG行動チェックリスト
- □ 保証人付きの借金だけを先に返す
- □ 財産を隠す、または名義を変更する
- □ 新たな借金をする
- □ 虚偽の書類を提出する
- □ 計画的に詐欺的借入をする
自己破産に向いている人・向いていない人
向いている人(返済継続が難しい/財産が少ない/借金が大きい)
自己破産が向いている人:
- 月々の返済能力がない(完全な支払不能状態)
- 借金総額が500万円以上など、非常に大きい
- 財産がほぼない
- 将来の返済見通しが立たない
向いていない人(残したい財産がある/収入が安定している等)
自己破産が向かない人:
- 守りたい資産(持ち家、生命保険など)がある
- 月々わずかでも返済能力がある
- 収入が安定している
- 保証人への迷惑を最小化したい
迷ったときの判断軸(返済可能性・家計改善・代替手段)
判断する際のチェック:
- 月々いくらでも返済できる可能性がある?→ 任意整理を検討
- 収入が安定していて、大幅な減額で返済できる?→ 個人再生を検討
- 完全に返済不可能で、負債が大きい?→ 自己破産を検討
自己破産の手続きの流れ(同時廃止をベースに)
相談〜受任通知で督促が止まるまで
ステップ1:弁護士に相談
現在の状況を説明。自己破産が適切かを判断。
ステップ2:弁護士に依頼
委任契約を締結。弁護士が「受任通知」を貸金業者に送付。
効果:
この時点で、督促電話がすぐに止まります。
書類準備で必要になりやすいもの(家計・財産・債務の資料)
必要な書類:
- 給与明細(直近3ヶ月分)
- 通帳コピー(直近6ヶ月分)
- 家計簿(月々の生活費)
- 身分証明書(戸籍謄本、住民票)
- 不動産登記簿謄本(持ち家がある場合)
- 生命保険の証券
申立て〜開始決定〜免責許可決定までの全体像
申立て:
裁判所に破産申立書を提出。費用を納付。
破産手続開始決定(1~3ヶ月後):
裁判所が「破産手続を開始します」と決定。官報に掲載。
免責審尋(1~2ヶ月後):
裁判官が本人から事情を聞く。
免責許可決定(同日または数日後):
借金がゼロになる。
手続き中の注意点(連絡対応、家計の管理、追加借入の禁止)
- 弁護士からの連絡には必ず応じる
- 家計をしっかり管理する(通帳記録など)
- 新たな借入は一切してはいけない
- 財産を隠さない
- 重要な連絡は見落とさない
自己破産の種類(同時廃止・管財・少額管財)
同時廃止とは(対象になりやすい条件)
同時廃止:
破産手続開始決定と同時に、破産手続を終了させる方法。財産がほぼない人が対象。
費用が最小限:
数千~万円程度。
管財事件とは(管財人が付くケースと理由)
管財事件:
破産管財人が選任され、財産を調査・処分する方法。財産がある人が対象。
費用が高い:
20~50万円程度の予納金が必要。
少額管財の特徴(費用・期間・メリット)
少額管財:
管財事件だが、費用を抑えた方法。一部の裁判所で採用。
メリット:
管財事件より費用が低い。ただし、管財人は付く。
どの手続きになるかの目安と決まり方
同時廃止になりやすい条件:
- 持ち家がない
- 預貯金が少ない
- 自動車を所有していない
- 生命保険に解約返戻金がない
決まり方:
裁判所が申立書類を審査し、判断。
自己破産にかかる費用の目安と内訳
弁護士費用の相場と変動要因
同時廃止の場合:
20~30万円程度
管財事件の場合:
30~50万円程度
変動要因:
- 事務所の規模
- 手続きの複雑さ
- 地域
裁判所費用(申立て費用・予納金など)の考え方
同時廃止:
3,000~10,000円程度(印紙、切手、官報費用)
管財事件:
20~50万円程度(管財人報酬)
分割払い・法テラス等の選択肢(利用できる場合の整理)
分割払い:
多くの弁護士事務所が月々3~5万円の分割払いに対応。
法テラス:
経済的に困難な人向けの、弁護士費用立て替え制度。
具体的な要件や費用感の整理は、法テラスの自己破産費用の案内も参考になります。
利用条件:
一定以下の収入・資産。
費用を抑えるためにやるべき準備
- 借入先と残額を正確に把握する
- 給与明細や通帳を事前に用意する
- 財産を正確にリストアップする
- 複雑な手続きを避ける(同時廃止を目指す)
弁護士に相談するメリットと、司法書士との違い
自己破産が最適かどうかの見立てができる
弁護士に相談することで、以下が実現:
- 自己破産が最適か、他の手段の方が良いかが判断できる
- 同時廃止と管財のどちらになるかの見立て
- 費用・期間・デメリットの見通しが立つ
相談前の予備知識として、東京弁護士会の自己破産解説も確認しておくと、相談がスムーズになります。
窓口対応(督促停止)と裁判所手続きの代行
- 受任通知により、督促が止まる
- 貸金業者との交渉を代行
- 裁判所への申立てを代行
- 審尋での質問に対する予行演習
司法書士に相談できる範囲・できない範囲
司法書士でも自己破産に対応できます。ただし、以下の注意点:
- 訴訟代理はできない
- 140万円以上の案件に制限がある場合
- 本人が審尋に出席する必要がある場合がある
相談先選びのチェックポイント(費用・説明の分かりやすさ等)
- □ 費用が明確に説明されているか
- □ 説明がわかりやすいか
- □ 初回相談が無料か
- □ 分割払いに対応しているか
- □ 信頼できる雰囲気か
よくある質問(誤解されやすい点を一気に解消)
より具体的な疑問の整理には、法テラスの自己破産FAQも参考になります。
戸籍・住民票に載る?選挙権はなくなる?
回答:戸籍や住民票には何も記載されません。選挙権も失われません。自由に投票できます。これは大きな誤解。
会社や家族にバレる可能性は?
回答:基本的にはバレません。ただし、以下の場合は知られやすい:
- 既に給与差し押さえが進行中
- 保証人が会社の同僚
- 持ち家売却時
給料や口座は差し押さえられる?
回答:自己破産申立て後、新たな差し押さえは停止。既に進行中の差し押さえも停止。
クレジットカード・ローンはいつから使える?
回答:信用情報から事故情報が削除されるまで(5~10年)は新規申し込みは難しい。ただし、デビットカードやプリペイドカードなら利用可能。
財産隠しがバレたらどうなる?
回答:免責不許可事由に該当。免責が許可されない可能性があります。絶対にしてはいけません。
まとめ|自己破産で再スタートするために最初にやること
まずは家計と債務の全体像を整理する
自己破産を検討する際の最初のステップ:
- 全ての借入先と残額をリストアップ
- 月々の収入と生活費を記録
- 保有している財産を把握
- 本当に支払不能な状態か確認
早めの相談が有利になる理由(督促・延滞・差し押さえ回避)
早期相談のメリット:
- 督促を早期に停止できる
- 延滞の進行を止められる
- 給与差し押さえを回避できる可能性
- より良い条件での手続きが期待できる
再発防止のための生活設計(家計管理・借入習慣の見直し)
免責後の生活をうまくいかせるために:
- 家計簿をつけて、支出を把握する
- クレジットカードへの依存を断つ
- 月々の生活費の中で生活する習慣をつける
- なぜ借金ができたのか、その原因を分析する
- 必要に応じて、カウンセリングを受ける
最後に重要なメッセージ:
自己破産は「人生終わりの制度」ではなく、「人生をリセットするための制度」です。確かに、失うものもあります。しかし、同時に得られるものも多くあります。借金で苦しんでいるなら、一人で抱え込まず、早めに弁護士に相談してください。あなたの人生は、まだこれからです。

